取材2026.04.28

「コーヒーで人とつながる」── 喫茶ニュートーキョー三代目マスターの想い

70年続く老舗喫茶の今

取材・文:下町すきっぷ編集部
京成高砂高砂商店街
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「コーヒーで人とつながる」── 喫茶ニュートーキョー三代目マスターの想い

昭和30年代から京成高砂の街を見守り続ける喫茶店。三代目マスターが語る、コーヒーを通じた人とのつながりと、変わりゆく街への想い。

取材日:晴れた火曜の朝

京成高砂駅から歩いて数分。商店街から一本入った路地に、その喫茶店はある。扉を開けると、コーヒーの香りと昭和の空気が混じり合って漂ってくる。カウンターの奥で、三代目マスターの佐藤さんがネルドリップの準備をしていた。

「ニュートーキョー」という名前は、戦後まもない東京への希望を込めて祖父がつけたものだという。それから70年、街は変わり続けたが、この店のコーヒーの味だけは変わっていない。

── このお店を継ごうと思ったのはいつ頃ですか?

「正直に言うと、最初は継ぐつもりがなかったんです。東京の会社に就職して、全然違う仕事をしていました。でも、父が体を悪くしたタイミングで、一度だけ手伝いに来たら……もう離れられなくて。お客さんの顔を見ているうちに、ああ、ここに自分の居場所があるんだなと思いました」

── 三代目マスター 佐藤 誠さん

カウンターには、今日も常連の顔がそろっていた。定年退職したという70代の男性、近所に住む大学生、高砂に引っ越してきたばかりの若いカップル。年齢も背景も違う人たちが、同じカウンターに並んでコーヒーを飲んでいる。

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うちに来る人は、コーヒーを飲みにくるんじゃなくて、ここにいるために来てくれてるんだと思います。コーヒーはきっかけに過ぎない。

── 佐藤さん

── 京成高砂という街について、どう思っていますか?

「変わりましたよ、本当に。でも、なんでしょうね、この路地の空気だけは昔と同じです。朝、店を開けて、ご近所の方が「おはよう」って声をかけてくれる。その感じが好きで、この場所でやり続けているんだと思います」

── 佐藤さん

一杯のコーヒーが持つ力

ネルドリップで丁寧に淹れられたコーヒーが目の前に置かれた。一口飲む。深みがあるのに、後味がやさしい。この味を守るために、佐藤さんは毎朝4時に起きて豆を焙煎する。

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── 後継ぎのことは考えていますか?

「息子がいるんですが、今は別の仕事をしています。継いでほしいとは思うけど、強制はしたくない。でも、もし継ぎたいと思ってくれた時のために、レシピも技術も、全部ちゃんと残しておこうとは思っています。この味を、もう少し先まで続けさせたい」

── 佐藤さん

取材を終えて店を出ると、路地に陽だまりが広がっていた。高砂のいつもの朝だった。